OyakuniTateba blog

現役 人事マネージャーから あなたに伝えたいこと

二人の女性画家の生き方に学ぶ ~加藤穂月・河野ルル~

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 今年に二人の若い女性画家に出合いました。絵を描くという「業(ごう)」(絵をかかずにはいられない)に果敢に挑戦する二人。二人の描くことへの向き合い方は少し違うけれど、私の心を力強く勇気づけてくれるものでした。

いま、まさに就職活動で、自分の道を探している君へ、この二人の生き方から何か感じてもらえればと思います。 

 

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加藤さんは大阪府出身の画家です。大阪での個展のテーマは「セレンディピティに辿りつくには」です。「セレンディピティ」とはイギリスの小説家ホレスの造語です。彼女の絵への向き合い方を知るには、まず、この言葉の意味を知らなければなりません。ウィッキーから引用します。

「この私の発見は、私に言わせればまさに「セレンディピティ」です。このセレンディピティという言葉は、とても表現力に満ちた言葉です。この言葉を理解していただくには、へたに語の定義などするよりも、その物語を引用したほうがずっとよいでしょう。かつて私は『セレンディップの3人の王子』という童話を読んだことがあるのですが、そのお話において、王子たちは旅の途中、いつも意外な出来事と遭遇し、彼らの聡明さによって、彼らがもともと探していなかった何かを発見するのです。たとえば、王子の一人は、自分が進んでいる道を少し前に片目のロバが歩いていたことを発見します。なぜ分かったかというと、道の左側の草だけが食べられていたためなのです。さあ、これで「セレンディピティ」がどのようなものか理解していただけたでしょう?」

彼女の言う「セレンディピティに辿りつくには」とは「彼女の画家としての心構え」なのでしょうか。

ところで、加藤さんは旅先や街で出会ったものを、「いったん飲み込んで、キャンバスに吐き出すっ」という感じの画家です。

そこで思い出すのが、私が憧れる写真家 ソール・ライターの言葉です。

「いつ見たかとか、何を見たかとかは関係ない。大事なことは、それをどう見たかが重要なことなんだ」

さらに、彼女のインタビューは続きます。「人間力」を高めることが絵を描く力につながるのだと。そのために、日々、自分の「人間力」を高める努力をしていこう!と。

飲み込んだものを、キャンバスに吐き出す時に、まさに彼女の内面や、強さ、迷いとかも一緒にキャンバスに吐き出される、その醍醐味や楽しさ、怖さを、この若い年齢で知っていることに驚くとともに、感動を覚えました。そして、人間力を高めることが自分の画家としての力を高める(それをどう見ることができるか)ということに。

真剣に何かに向き合うことで、自分を高めていく。

こんな仕事に出合えたら、こんなに素晴らしいことはないでしょう。そこには、上場企業だとか、残業が少ないとか、そんなことは関係ありません。あなたが、真剣に向き合える仕事であればそれでいいのです。

 

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[PROFILE]

加藤穂月 / Hozuki Kato

2015年 京都造形芸術大学卒業制作展【優秀賞】
2015年 UNKNOWN ASIA Art Exchange Osaka 2015【Rick Wang賞】
2016年 シェル美術賞【入選】

美意識を揺さぶられるシーンに出会う。人の好きなものの話を聞く、知らない土地を歩く、知った土地も何か無いかと思いながら歩く。

事物の周辺に漂う徴候や余韻の発見が、そういうシーンに出会わせてくれる。そうやってそれが体にたまり、キャンバスにたまる。呼吸と一緒に吸って、嗅いで、シーンを予感して見つけて、描き留める。私はまだまだやり足りないでいる。

加藤穂月

 

 

 

 さて、もう一人は河野ルルさんです。

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ルルさんも飲み込んで吐き出すタイプの画家さんです。個展で河野さんとお話しする幸運がありました。実は、彼女の絵を見た瞬間そう思ってそんなお話をしました。彼女の素直な気持ちがキャンバスいっぱいに広がる、彼女が見たものは彼女の中で拡散し凝縮し、そして一気に吐き出される。そう私はストーリーテラーの様な印象を受けましたが、ご本人は描くときはあまりストーリーを考えずに一気に吐き出すそうです。

後記のプロフィールにあるように、彼女はもともと画家志望ではありません。就職し海外へ旅行している時に、自分の「業」に気づいたのです。

彼女の絵は、まさに「業(ごう)」のなせる「業(わざ)」です。

楽しくて楽しくてしかたがない! そんな色がキャンバスいっぱいに広がります。そこには一点のくもりも感じられません。(いや、もちろん、きっと悩むことや壁もあったでしょうが)

仕事とは、実際にはいろんなことを覚えていって、できることを増やしていって一人前になっていくものです。その過程で、ある日突然、「あ、私、この仕事が面白いかも。やりがいを感じている!」というものに必ず出会うものです。

そのためには、じっとしていては出会えません。ルルさんのように、何事にもチャレンジしていく姿勢が大事です。そして、彼女はさらに真剣に絵に向き合い UNKNOWN ASIA 2017 グランプリ を受賞します。きっとその道のりは苦しかったと思います。ここが彼女の素晴らしいところです。ただ「好き」だけでは「業」にはなりません。「好き」を突き進んでいく中で苦しみや壁にぶち当たり、それを乗り越えてこそ本当の「業」になるのでしょう!!

ところで、私は、彼女が歳を重ねていって、幸せだけでなく、悲しみも描くようになったらどうなるんだろう、いや、彼女のことだから、悲しみを乗り越える画を描こうとするんだろうな。その時、彼女は新たな「色」の意味を知るのかな、そんなことを考えながら会場を後にしました。

 

 

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[PROFILE]
河野ルル / Lulu Kouno

UNKNOWN ASIA 2017 グランプリ受賞

名古屋在住。2015年、会社を辞めて長期の旅行に出かける。 いろいろ旅行した後たどり着いたメキシコで口座のお金をほとんど使ってしまったことに気づく。 そこで宿の壁に絵を描く代わりに、タダで宿泊させてもらえないかとホテルのオーナーに交渉。 描き終わったらまた次の宿に移動し、いろんな壁に絵を描いているうちに、 それが楽しくてしょうがなくなり、絵を仕事にしたいと、約1年後帰国。 2016年春から作家活動を開始。

ほとんどの絵が下書きなしの一発書きで、見ている人が明るくなればいいと思って描いています。 目標は、世界中の孤児院や障害児童施設に絵を描いて、そこにいる子どもたちに喜んでもらうこと。

河野ルル(本名です)

 

 

※プロフィールの引用はDMOARTS HPより